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私たちは1階に降りた。
直人くんがお茶を出してくれた。
テレビの前のソファに座る。
その前にあるローテーブルにも、隣のダイニングテーブルにも灰皿は溢れんばかりの吸い殻を抱えて居座っていた。
「ねえ、直人くん。」
私が話しかける時には彼はもう煙草をくわえていた。
「ん?」
彼は煙を吐き出しながら返事をした。
「煙草…。いつもそんなに吸うの?」
「…ああ。あ、ワリイ。せっかくの服に匂い着いちゃうな。」
直人くんは重そうなサッシを開けて部屋に風を入れた。
「そうじゃなくて、カラダが心配だよ。」
「お、マジで?奈々ちゃん心配してくれる?」
「するよ。する。だって…私と会ってからだって、もうだいぶ吸ってるもん。」
「あ、今日は…特別。」
「“特別”?」
「今日は…緊張してるから。」
「…え?」
「冗談。冗談。」
「冗談言ってる場合じゃないでしょ、もう。」
私は心臓の動きを悟られないように、なんとか言葉を繋いでいた。
すると、直人くんが大きく煙を吐き出して言った。
「なんかさ…。口が寂しくて。」
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