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私はソファ。
彼はダイニングのイス。
直人くんは煙草を手にしたまま小さく笑う。
私は彼の唇から視線をフラフラと宙に浮かした。
「…ガムは?」
「出すの面倒じゃん。」
「じゃあ、アメは?」
「アメ…ねえ。太るじゃん。」
「太るって…少し太った方がいいし、タバコで痩せるよりずっといいよ。私、今日、買ってあげようか?」
「買ってあげようかって…子供か俺は。…ん。でも買って。…甘酸っぱいの。」
そう言う直人くんは本当に子供みたいだった。
「いいよ。」
直人くんはくわえていた煙草の火を灰皿でもみ消した。
そのタバコは火を付けたばかりで、まだだいぶ長かった。
「…夕飯(ユウメシ)さあ、奈々ちゃんせっかく来てくれたし、『ザ・東京』ってとこで飯食わせてやりたくて、ちょっとしたとこ予約したんだよね。」
「…ウソ。」
思いがけない直人くんからのプレゼントみたいだった。
「ドレスコードはカジュアル可ってなってるから大丈夫だと思うけど、下だけ着替えるか。」
直人くんはTシャツの上にシャツを羽織って、ハーフパンツだった。
「奈々ちゃんはバッチリだな。」
彼はそう言いながら階段を上がり、しばらくして着替えを済ませて降りてきた。
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