モザイク

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駅に着くまでに何度か彼のシャツを小さく引いた。 「飯代は出すから切符は自分で買いなさい。130円ね。」 彼は子供に言い聞かせるように言った。 「うん。」 私は販売機で言われたとおりに切符を買った。 週末、夕方。 駅のホームは混んでいた。 直人くんは出来るだけ人気(ヒトケ)のない方に私を誘導し、電車を待った。 電車が到着し、人の波に紛れて私たちも乗り込む。 直人くんは私を隅へ追いやった。 電車の隅。 窓辺に立って 混雑してる分直人くんとの距離は近かった。 二人のたわいもない話は 私にとっては非日常で たわいもない話ではなくなっていた。
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