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目的の場所までは短い距離を乗り継いで、何度か路線を変えて向かっていた。
電車内もホームも改札も。
どこもかしこも混雑していて油断をすれば人にぶつかってしましそうだった。
人の流れを乱さないように、少し早歩きの私の足は少しずつ慣れないヒールにいじめられていた。
たかが乗り換えと言ったって、階段を上がり、それを下り、時間と人の波に押されて早歩き。
予想以上に足に負担がかかっていた。
履き心地がいい靴だったので、まだだいぶマシな方だけど、パンプスの淵が足の甲で擦れて痛かった。
けれど、私はその足でも懸命に彼の歩調に合わせた。
都会の歩調。
手を伸ばせばすぐに彼の手をとれる。
でも…
私たちは手を繋ぐことさえ出来なかった。
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