モザイク

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――コンビニの前。 10年ぶりに再会した直人くんは少し痩せていた。 お互いに『変わらない』と言いながら、思春期から大人になった10年の歳月をその一言で片付けてしまうのは、嬉しいようで味気ない。 女ならば 『変わらないね。』よりも 『綺麗になったね。』が欲しいもの。 だけど、彼の目にそう映らないのであれば諦めるしかない。 「お疲れさま。」 私は彼が肩から提(サ)げていたカメラバッグに視線を置きながら言った。 「…悪い。煙草もう一本いい?」 彼は私の言葉に視線で応えながら、私の返事を待たずにすでに煙草を一本取り出していた。 「うん、いいよ。」 私は返事をしながら、無意識のうちに一歩後ずさった。 実は 煙草の匂いも煙も 苦手だった。
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