1760人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
「あっち行こうぜ。夜景がもっときれいに見える。」
直人くんが立ち上がり、私も続いた。
強い風に逆らって私はワンピースの裾をしっかり握る。
ロータリーの端まで来て柵の手すりに手を掛ける。
夜景は確かに私の目を奪った。
だけど…
私の心を奪ったのは
煌(キラ)びやかな夜の光なんかじゃなかった。
彼は私のカラダの向きを変え、私は柵に背中をつけた。
再び重なる唇は
それ以上を欲しがっている。
もはや夜景は私たちの背景に過ぎない。
カラダをよじらせ薄目に入る東京の夜景は
涙に滲んで
カラフルなモザイク模様に映っただけだった。
最初のコメントを投稿しよう!