モザイク

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彼のカメラバッグに触れるだけで 思いのほか緊張して 心臓の動きが乱れていた。 彼が私に謝って、あからさまに歩幅を狭(セバ)める。 「なんか俺…じいさんになった気分。」 彼が笑うその距離は 自分がお願いしたにも関わらず、近すぎて驚いた。 「…今日一日、そうしてなよ。“直人おじいちゃん”。」 「あ、じゃあ知らねえ。」 直人くんは大股で歩きだした。 「待って!冗談だから。」 私はもう一度カメラバッグに手を伸ばした。 「ウソだよ。冗談。」 彼が笑って振り返る。 昔、教室で話したあの距離よりずっと近かった。 「なあ、パーティー楽しかった?」 「うん。果歩がよろしくって言ってたよ。」 あれから10年よりも長い年月が経っていたなんて… 信じられなかった。
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