モザイク

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…ん? 私はハッとした。 どれくらいか、一瞬か 眠ってしまっていたらしい。 睡眠不足の体に車の揺れはあまりにも心地よかった。 力の抜けた体を起こして、シートに座り直す。 車の両サイドの窓は開いていた。 「あ、ごめん。寝てたからさ。」 彼はまた煙草を吸っていた。 窓の外を白い煙が流れていく。 それが目でわかるほど、車はゆっくりと動いていた。 「私こそ…ごめん。だいぶ寝てた?」 「いや、少し。」 久しぶりの再会なのに、彼の車で寝てしまうなんて大失態だった。 「ごめん…。恥ずかし過ぎる…。」 「いいよ。久しぶりに会ってそこまで緊張感ないのも笑える。」 「違うよ!そうじゃないの。…夕べ、眠れなかったの。」 私は慌てて否定した。 緊張して… …眠れなかったんだから。 私はそこで夜行バスで来たことを彼に明かした。 「マジで?新幹線で来りゃあっと言う間だろ?何でバスなの?」 上手い説明が思いつかなかった。 直人くんには言えない。 あなたとの距離を… 縮めたかったなんて。 「夜の移動って、なんだかわくわくするじゃない?」 下手な言い訳。 だけど、直人くんは笑った。 「子供か。」 彼は煙草の吸殻を車の灰皿にねじ込んだ。 中は吸殻でいっぱいだった。
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