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ずいぶんと時間をかけて、車は彼の自宅付近まで来たようだ。
車は大通りを抜けて狭い路地に入った。
車幅ギリギリに感じるほどの狭い道を何でもないように運転していく。
「着いたよ。」
彼が駐車しようと狭い路地内で車を回転させる。
路地も路地なら駐車場も狭い。少しの余裕もないように思えた。
「ここに止めるの?」
思わずそう聞いてしまったくらいに。
隣には高級外車が止まっていた。
「あれには当てねえよ。」
直人くんはそう言って車を狭いスペースに器用に収めた。
「こっち。」
車を降りた彼に着いて行く。
マンションのエントランスの鍵を手早く解除して、彼は進む。
私のとまどいなど全く気にしない彼の歩調。
ただの男の人の家にあがるわけじゃない。
…直人くんの家なのだ。
でも、緊張してるなんてことは
彼には気付かれたくないし、
私は『緊張』を『遠慮』に変換して誤魔化していた。
彼が玄関を開けながら私に笑う。
「ようこそ、うさぎ小屋へ。」
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