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防波堤にグッタリと倒れ込む汗だくの俺を余所に。
「ひゃ~!やっぱ夏は海だよなぁ~♪」
潮風を受けながらはしゃぐ姿に、ほんの少しムッとしてしまう。
ココへ辿り着けたのは一体誰のおかげだと思ってんだよ、お前。
俺が必死に自転車漕いでやったからだろーが。少しは感謝しろ。
ってかただ単に俺が恐ろしくじゃんけんに弱かっただけの話だけどな!!
「お前も早くこっち来てみろよ。それなりに冷てーぞ」
靴と靴下をそこいらへ脱ぎ散らかしたまま。
ザブザブと膝の辺りまで海に入った山下は、満面の笑みでそう言いながら俺に手招きした。
まるでガキみたいに喜ぶその姿に、思わずクスリと笑いが漏れる。
「それなりに冷たいって何だよ、それなりって」
海なんだから、そりゃ冷たくて気持ちイイに決まってんじゃ・・・。
「って、ぬるっ!!」
浜辺に寄せる波に手を伸ばした俺は、思わずそう突っ込んだ。
なんだ?なんでだ!?
「こんだけ暑いんだから水温も上がってんじゃね?深いトコいきゃもっと冷てーかも」
キラキラと輝く笑顔のままこっちへ歩いて来た彼は、顰めっ面で波を見つめる俺の腕を掴み。
「え!?や、ちょ!?」
またもやザブザブと沖へ向かって進み始めた。
お前は靴も靴下も脱いでズボンの裾捲って準備万端だからい~かもしんね~けどっ!!
俺まだ靴も靴下も履いたままだっての!!
山下に引き摺られながら、なんとか靴だけは脱いだものの。
靴下とズボンはびっしょり濡れてしまった。
こんな濡れねずみになっちまって帰りど~すんだよ。
「お~ま~え~なぁ~…」
低く唸る様に言って、少しだけ高い位置にある薄茶色の眼をジロリと睨みつけた。
クソッ…出会った頃には同じ位の背丈だったハズなのに自分だけそんなにデカくなりやがって。羨ましい。
………ま、癪だから絶対に口には出さないけど。
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