第2話

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「蟻を捕まえて離す。どこが面白いんだよ」 これくらいの頃は意味のない事が楽しかったな。 そんな事を思い出していると、急に蟻がもがきだした。 どんなに脚を動かしても前には進まない。現れた急な斜面にどんどん吸い込まれていく。 そうして、黒い虫が頭を覗かせ、一瞬で穴の奥に引きずり込んだ。 「な、何なんだ?アレ……」 初めて見る光景に息をのむ。 「蟻地獄だよ」 子供が淡々と答える。 「蟻……地獄?」 そんな生き物を俺は知らない。 子供は面白いのか、また一匹捕まえてうっすら窪んだ場所に離す。 俺は目が離せないまま、引き込まれる蟻を見つめた。
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