あたしを縛る甘い鎖

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「……………?」 聞き慣れない音の言葉に、明里はまつ毛を震わせ視線を上げた。 「ふふ。気に入った? アニ。ちゃんと返事をしなさい」 「……………」 「アニ? アニマート。 僕は莫迦な子は嫌いだよ。一回で覚えられないなら、身体に教え込まないとね」 響がパッと手を振り上げると、明里は身体を大きくびくつかせた。 キツく瞳を閉じて、肩を竦ませ縮こまる。 それにアモロッソが顔を上げ、哀しげに鼻を鳴らした。 「……………」 その様に、響は手を下ろしてアモロッソをひと撫でした。 ふと息を落として、そして桃のような明里の頬をむにっと摘まんだ。 足元ではまた、ぽすんぽすんと尻尾の音がする。 殴られるとばかり思っていた明里は、突然のことに何が起こっているのか理解できず、瞬きを繰り返した。 ようやく開けた瞳に写ったのは、不機嫌面の、けれどどこか楽しそうな響の姿。 響は明里の頬っぺたで遊ぶように引っ張っていた。 「アーニ。返事しなさい」 怒っている雰囲気ではないが、響は返事をしなければ離す気はないらしい。 明里は諦めて、小さな声で頷きながら返事をした。 「うん。いい子」 満面な笑みで、頬を引いていたはずの手を頭に滑らせて撫でる響に、明里は目を見開いて瞠目する。 「いい子 いい子」 ただ返事を返しただけなのに…… たったそれだけなのに、褒められ頭を撫でられる。 さっきとのギャップに驚きつつ、とっさに顔を背けてしまった。 (……どうしよう……恥ずかしい……) 体温が上がって自分の顔が赤く染まっていく気配に、明里は手の甲でそれを隠した。 そんな明里に、響は笑うのだった。
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