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身を引いて、レースカーテンをもとに戻し、踵を返してリビングの隣の引き戸に目を向けた。
たぶん、そこは響の寝室。
どうしようかと迷ったが、入ってはいけないと言われてない。
(覗くくらいならバレないょね?)
そう思って、明里はその戸をそっと開けた。
そこには、大きな真黒の物がドンと置いてある。
鈍く光るそれは、グランドピアノだった。
「……………………ピアノ?」
明里は引き寄せられるようにその部屋へと足を踏み入れる。
引き戸から、向かって左手にピアノ。
右手の壁際には机と椅子。
またその奥には大きな本棚に、ぎっしりと並べられた本。
ピアノに触れながら進んで行くと、ピアノの奥にベッドが置いてあった。
「響は、ピアノ……弾く人なのかな?」
そういえば父と同じ、スラリとした指が綺麗な人だった。
(どんな音を奏でるのだろう?)
聞いてみたいなと思いながら、明里はその部屋を後にした。
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