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明里は顔を上げて、鼻を啜りながらその名を呼んでみた。
「ーーロッソ……アモ、ロッソ?」
呪文みたいな名前。
けれどそれを口にしたら、アモロッソは尻尾のを振りながら嬉しそうにぽんっと飛び上がって明里の側にやってくる。
隣に座り、なに? と言いたげにまん丸の瞳で明里を見た。
「何でお前そんな名前なの? って、あたしもアニマートってヘンテコだけど……」
明里はアモロッソの頭を撫でながら、ポツリとぼやく。
(……あたま……)
そういえば、あの人はよく頭を撫でてくれる。
その手は表情と同じように優しくて、けれどあの笑顔が嘘だということも知っているから。
だから明里は響を信じない。
もう二度と、あんな痛みは味わいたくなかったから。
でも……
「お前だけは信じるよ。ロッソ……」
ここにいる間だけは、どうか側にいて。
そんな祈るような気持ちで、明里はアモロッソに抱きついた。
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