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そんな彼女の反応に、その人はまたクスクスと笑った。
「こんなコトで赤くなられたら、僕まで照れてしまうよ。
可愛い子だね。触れられるコトに慣れていないの?」
「っ!?」
そう言って頭を撫でる手を、彼女はカッとなってつい力任せに払いのけてしまった。
「さっ………触るなぁ!」
同時に、掠れた声で叫ぶ。
「何で助けたんだよっ?! あのまま放って置いてくれたら……もう二度と起きなくてすんだのに!! どうしてっ……?」
あのまま目を閉じて、誰にも気付いてもらえずに死んでいく。
なんて、自分に合った最後だろう。
それでよかったのに。
なのにまた、自分は目を醒ましてしまった。
自分は愚かだから。
そんなふうに触れられて優しい笑顔を見せられたら、また信じてしまう。
裏切られるとわかっているのに。
ほろほろと涙を流す彼女に、その人はふと笑んで手を伸ばす。
「だって、いらないなら僕がもらおうと思って」
「……は?」
「ーーねぇ、その命、棄てるくらいなら僕にちょうだい?」
そんなことを、ゾッとするような微笑でさらりと言い、遊ぶように彼女の首に付けられた鈴を鳴らした。
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