燃エ盛ル炎

2/9
53人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
この涙声が届かないなんて。 横断歩道の中央で俯く志願者。 でも誰も相手にしてくれない 命を自ら絶つのは弱虫の証拠。 逝ってやんなよ、チキンが。 腹苦しくなる女子高生の叫び。 何がワタシをかえてくれるの? ふざけんじゃねぇよ、ジブン。 やめろ!が何故 言葉に出ない。 どけ、車の邪魔だ! 処女め。 酷い! 勝手に決めつけないで。 そんな汚い言葉を浴びせられる のはいつも孤立した私ヒトリ。 「どうかしたの? お嬢さん」 杖をついた老人が女に近寄る。 「さあ 安全な場所に移動すると しよう。ここではなんだから」 親切で心優しいおじさんに命を 救われたのは、幸か不幸か。 おじさんに連れていかれたのは とある馴染みのある喫茶店。 「どうして危ないことをしたの かね? まだ君のような若い子が 命を無くそうだなんて……」 気づけば、その場に泣き崩れて もがき、喚き散らしていた。 「落ち着きなさい。ほれ この薬 を飲めば今にも楽になるよ」 麻薬か? いや分からない。 ちょ、比奈乃! 飲んじゃダメ。 葛藤が判断を迷わせる。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!