step1 全否定して躾てやる

3/5
802人が本棚に入れています
本棚に追加
/113ページ
あの、永田という男は全く…。 私は布団に横たわり、一人ムカムカしていた。 アイツ、意味分かんない…。 …カッコいいけど…。 無理無理!無理! トイレ借りに行くだけなのに…。 漏らすじゃん。 …勘弁してよ。 「…永田…か…」 私は布団の中にもぐった。 …アイツめ。 と、また奴の顔がふとよぎった。 30歳を過ぎてからの焦った結婚。 2年間の短い結婚生活に、悩み苦しむ事もなく離婚した。 友人にはまだまだ独身で、バリバリ仕事している人間がたくさんいるのに。 結婚して、知ったのは空しさだけだった。 幸せの自慢話なんて、誰だって聞きたくない。 仕事してる友人達からしてみたら、結婚というラクな選択をしたと思われていたに違いない。 私は正社員で働いてきた訳ではないが、パートととは言え、仕事士な方だから、専業主婦だなんて向いてない事くらい分かっていた。 ラクとは言え、自由もなく、いつも何をするにも旦那の許可を取らなくてはいけない。 正直、そういう面倒な事。 性格上、キツイ。 そんなやり取りを友人達は、きっと更に面倒臭そうに煙たがっていたのではないかと思う。 はっきり言って、誰かのためだとかって、自分を犠牲にする生活って、偽善的で私には無理。 それも分かり始めた頃には、何もしたくない病に侵されて、家事もせず、両親に甘えてばかりで、実家に居座ったりして逃げていた。 やっぱり私は、自分らしく生きて行きたい。 それを決め手に誰に相談する訳もなく、ワガママを一方的に突き通して、離婚したのだ。 両親は呆れて、怒鳴り付けてきた。 「もうこの家では、二度と生活させない」 そう言われて思う事。 永田の言う通り。 私は、ワガママで今まで旦那や親に甘やかされていた。 アイツに全否定されるのも、正直な所、間違ってはいないのだ。 頭のどっかで、こんな自分がダメなんだって分かっている。 だからアイツの言う言葉が、イチイチ私の的を得ているからこそ。 永田の言葉に支配されてしまう。 躾だなんて、この歳でどう躾るって言うのだろう。 今さら。 水曜日、土曜日が私の仕事休み。 それも、永田に決められた。 「俺の休みに合わせろ、そうしなければ自分の首を締める事になるぞ」 と、半ば脅し口調だった。 まぁ、確かに。 そのおかげで、トイレや洗濯機も貸して貰えるから、いいんだけどね。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!