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…ドカッ!
「痛っ…」
見上げると、また私の前を立ちはだかる男。
「くそてめぇ…」
永田かよ。
「ケッ、どいて!」
私は、避けて行こうとすると、
「ぶつかっといて、謝りもしない。無礼な女だ」
ぶ、無礼!?
私は、こんな無礼な男に無礼だと言われた事に腹が立って、また戻って強く言った。
「あんたに言われたくないわい!」
ファックユー!
私は中指を立てる。
「はっ、くだらん。ところで、何だもう新しい男が出来たのか?離婚したばかりで。…淫乱だな」
いっ、淫乱!?
「あんたのが変態な癖に!」
どういう奴よ、コイツは。
見上げて睨むと、冷たい視線で見下された。
「おい、痴女。欲情してんだったら、俺にいつでも言えよ。適当に構ってやるぞ」
「アホじゃないの、さっきから。離婚した後は、色々とまだ片付けなきゃいけない内情があるの」
…あ、しまった。
元旦那だと、口滑らした。
「へぇ~、前の旦那と会うんだ」
「とにかく、私の事はほっといて!」
永田は腕をまた組み直して、庭先から路駐している車を見る。
「着いたみたい。まぁ、早くキリ付けて、戻って来いよ」
そう言って、自分の家へと帰って行った。
キリ付けてって、キリはとっくに私から付けてある。
内情なんて、はっきり言ってない。
戻って来いよ…か。
何だか、またその言葉にドキッとしてしまった。
私の帰る場所は、…永田の場所。
そんなふうに聞こえてしまった。
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