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食事先で、元旦那に訪ねられた。
「一つ聞きたいんだけど。おまえって男と住んでるのか?」
ブブーッ!!
私はウーロン茶を思わず吹き出した。
「そんな訳ないっての!」
「そうだよなぁ」
吹き出したお茶を、フキンで拭いた。
「もしかして、あの背の高いヒョロッとした作業服の男だと思ってない?」
「おまえのアパートの方へ歩いて行ったから、てっきり」
「なわけないし!」
私は唐揚げを口に頬張りながら、強く言った。
「あの人、あのアパートの管理人の孫だよ」
元旦那は、受け皿にサラダを盛って私に手渡す。
「孫?孫がなんでまた」
「あのオンボロの裏に一軒家があってね、アイツはそこに住んでるの」
手渡されたシーザーサラダをガツガツ食べる。
「ほぉほぉ」
その後は、相変わらず私の仕事の愚痴聞きしてもらって、たらふく食べて喋って、帰りの車の中で眠ってしまった。
「おい、着いたよ」
「ふげぇ~、眠いにゃ」
元旦那の優しい笑顔に、半目で見つめる。
「そんな甘えた声出したらキスしちゃうぞ?」
5つ年上の元旦那は、私の口元を親指でなぞる。
「いいよ。なんてね、嘘だよ」
すると、口唇が近寄ってきて結局キスされた。
軽いキスだけかと思ったら、舌まで入れてきて、
「んんっ…ぅつ…」
…ま、いっか。
私も舌を絡めた。
「なぁ、恋人同士を思い出して、今晩久しぶりにエッチしない?」
「それは…ちょっと…」
キスはしても、そこまではもう別れた男とはハッキリ言って、したくない。
「ダメ?」
私は何だか目が覚めてきて、急に真面目に困惑してしまった。
「今からトシコの部屋でしたいよ、俺」
元旦那は興奮しているのか、息が上がっていた。
「それがダメなの」
「なんで?」
永田の冷酷な顔が浮かんだ。
「人を家に入れるなって言われてて」
「誰にだよ」
「あの管理人の孫に」
元旦那は眉を寄せた。
「孫なんて管理人じゃないから関係ないだろ?いいんだよ、そんなの無視しろ」
「だってね、言う事聞かないと追い出されちゃうから。本当にごめんなさい」
私は握り締められた手を、そっと離した。
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