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「まさか素直にそんな条件、聞き入れてるのか?おまえが」
えっ?
私は元旦那に対して、目が点になった。
「おまえがそんな聞き分けのいい女だったとは驚きだ。逆らって、世の中に反発ばかりするのが、トシコの取り柄だと思ってたから」
えっ…?
そりゃ、そうだけどさ。
今の言葉、何気にちょっとひどくない?
「ご、ごめん本当に。ごめんなさい」
どっかグサリと刺された感覚がして、アタフタしながら、何故か私が何度も謝っていた。
もう早く帰りたい。
私は慌てて、車を降りた。
「今夜はありがとう、ご馳走さまでした」
頭を下げて、足早にその場から立ち去った。
やっぱり結婚して離婚したら、他人なんだ。
恋人同士で別れて、ヨリを戻すのとは崩れた度合いが違う。
高々紙切れ一枚で結婚して。
離婚する時は、紙切れ一枚でも女は何度も銀行や役所に行く。
すっごい面倒臭かった。
結婚ってのが、まずもって面倒臭いんだって分かった。
そんな面倒臭い幸せは、もう要らん!
私は家に帰り、着替えて、すぐにお風呂に入りに行く。
早くキスした、口唇を洗い流したい。
いや、今日の私を洗い流したい。
甘えついでで、気軽に舌を入れてキスしてしまった、自分を洗い流したい。
脱衣場で、パンツとブラを外して、風呂場の戸を開ける。
…はっ!
びっくりしたぁ。
湯船に浸かりながら、気持ち良さそうに物音一つ立てず、居眠りする永田がいた。
コイツ、なんてキレイな顔してんの。
男のくせに。
静かにしてりゃ、こんなに良い男なのに。
「…?」
永田は気が付いたのか、ゆっくりと流し目で私を見た。
ドキッ…。
「お、お邪魔しましたーっ」
私は、後退りして出て行こうとすると、呼び止められた。
「おい、たまには湯に浸かると疲れが取れるぞ」
「あんたが入った後にする」
「まぁ、遠慮するなって」
ヒョイ、ヒョイっと手招きされた。
バカ正直に近寄るから、私はつくづくバカだと思った。
永田に反発なんて出来ないよ。
自分の首を閉める事になるんだから。
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