step3 甘えんな

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「まさか素直にそんな条件、聞き入れてるのか?おまえが」 えっ? 私は元旦那に対して、目が点になった。 「おまえがそんな聞き分けのいい女だったとは驚きだ。逆らって、世の中に反発ばかりするのが、トシコの取り柄だと思ってたから」 えっ…? そりゃ、そうだけどさ。 今の言葉、何気にちょっとひどくない? 「ご、ごめん本当に。ごめんなさい」 どっかグサリと刺された感覚がして、アタフタしながら、何故か私が何度も謝っていた。 もう早く帰りたい。 私は慌てて、車を降りた。 「今夜はありがとう、ご馳走さまでした」 頭を下げて、足早にその場から立ち去った。 やっぱり結婚して離婚したら、他人なんだ。 恋人同士で別れて、ヨリを戻すのとは崩れた度合いが違う。 高々紙切れ一枚で結婚して。 離婚する時は、紙切れ一枚でも女は何度も銀行や役所に行く。 すっごい面倒臭かった。 結婚ってのが、まずもって面倒臭いんだって分かった。 そんな面倒臭い幸せは、もう要らん! 私は家に帰り、着替えて、すぐにお風呂に入りに行く。 早くキスした、口唇を洗い流したい。 いや、今日の私を洗い流したい。 甘えついでで、気軽に舌を入れてキスしてしまった、自分を洗い流したい。 脱衣場で、パンツとブラを外して、風呂場の戸を開ける。 …はっ! びっくりしたぁ。 湯船に浸かりながら、気持ち良さそうに物音一つ立てず、居眠りする永田がいた。 コイツ、なんてキレイな顔してんの。 男のくせに。 静かにしてりゃ、こんなに良い男なのに。 「…?」 永田は気が付いたのか、ゆっくりと流し目で私を見た。 ドキッ…。 「お、お邪魔しましたーっ」 私は、後退りして出て行こうとすると、呼び止められた。 「おい、たまには湯に浸かると疲れが取れるぞ」 「あんたが入った後にする」 「まぁ、遠慮するなって」 ヒョイ、ヒョイっと手招きされた。 バカ正直に近寄るから、私はつくづくバカだと思った。 永田に反発なんて出来ないよ。 自分の首を閉める事になるんだから。
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