step3 甘えんな

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私は身体を洗って、湯船に浸かる。 「どっこらしょ」 私が入ると、湯が風呂桶から溢れ出した。 「……」 何か突っ込まれるかと思いきや、しばらく何も言わず永田は黙っていた。 「……」 私もこの沈黙が気まずくて、何かないかと会話を探していた。 「ね、永田は彼女とかいるの?」 「気安く俺の名前を呼び捨てするな」 くっ! 何だ、コイツ。 「じゃ、何て呼べばいいわけ?」 「永田様と呼べ」 バカじゃねーの! 「ね、いつも一人で家の中で何してるの?」 「さぁな」 はぐらかされた。 「永田ってさぁ…」 「…ちょっと、黙ってろ」 うぅっ!… 永田は、おやじくさい溜め息を付いた。 やっぱりコイツ、怖い。 私はしばらく黙っていた。 チャポーン♪と湯船から音がした。 すると、 「…やけに、聞き分けがいいじゃねぇか。何か有ったのか?」 「別に、私の事なんて、あんたに関係ないから言わない」 「関係ないけど聞きたいねぇ」 「言わないってば!」 私はプイッと、反対側を向く。 「ト~シ~コッ」 「気安く私の名前を呼ぶな」 「あっそ」 あれれ。 甘えた声で呼ばれたから、ドキッとしたのに。 永田はバサッと、立ち上がる。 ヌオッっと! 目の前で、またしてもアレがプラプラプラリ~ン!! 私はびっくりして、視線を大きくそらした。 堂々と何一つ、隠さずにいる永田の背中を見た時に。 ドキッ…ドキッ…ドキッ…とした。 それから、私は他の意味でも、恥ずかくなった。 甘えたくないのに、甘えて。 自分らしくとカッコつけながらも、その代償にお金にシビアになってて。 別れた旦那とディープキス。 永田の広くて大きな背中に、どうしようもない私の姿が写ったのだ。 「…な、永田っ」 思わず、名前を呼んだ。 「あぁっ?なんだ?」
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