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私は身体を洗って、湯船に浸かる。
「どっこらしょ」
私が入ると、湯が風呂桶から溢れ出した。
「……」
何か突っ込まれるかと思いきや、しばらく何も言わず永田は黙っていた。
「……」
私もこの沈黙が気まずくて、何かないかと会話を探していた。
「ね、永田は彼女とかいるの?」
「気安く俺の名前を呼び捨てするな」
くっ!
何だ、コイツ。
「じゃ、何て呼べばいいわけ?」
「永田様と呼べ」
バカじゃねーの!
「ね、いつも一人で家の中で何してるの?」
「さぁな」
はぐらかされた。
「永田ってさぁ…」
「…ちょっと、黙ってろ」
うぅっ!…
永田は、おやじくさい溜め息を付いた。
やっぱりコイツ、怖い。
私はしばらく黙っていた。
チャポーン♪と湯船から音がした。
すると、
「…やけに、聞き分けがいいじゃねぇか。何か有ったのか?」
「別に、私の事なんて、あんたに関係ないから言わない」
「関係ないけど聞きたいねぇ」
「言わないってば!」
私はプイッと、反対側を向く。
「ト~シ~コッ」
「気安く私の名前を呼ぶな」
「あっそ」
あれれ。
甘えた声で呼ばれたから、ドキッとしたのに。
永田はバサッと、立ち上がる。
ヌオッっと!
目の前で、またしてもアレがプラプラプラリ~ン!!
私はびっくりして、視線を大きくそらした。
堂々と何一つ、隠さずにいる永田の背中を見た時に。
ドキッ…ドキッ…ドキッ…とした。
それから、私は他の意味でも、恥ずかくなった。
甘えたくないのに、甘えて。
自分らしくとカッコつけながらも、その代償にお金にシビアになってて。
別れた旦那とディープキス。
永田の広くて大きな背中に、どうしようもない私の姿が写ったのだ。
「…な、永田っ」
思わず、名前を呼んだ。
「あぁっ?なんだ?」
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