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…って、平気?
この私が、ポリシーを否定されても平気でいられるって、どういう事よ。
昨晩の、元旦那の言葉を私は思い出した。
「逆らって、世の中に反発ばかりしている」
そんな私が、永田には一切逆らえない。
言う通りにしてしまう。
「何だ、俺の顔見つめて。キモイ女」
と、視線をはずされた。
ムカつくんだけど、コイツの口調に慣れてきているせいか、それともコイツだから聞き流せるのか。
気に触らない。
それどころか、何だか分からないけど、出来ることなら…。
「選択しても、結果はおまえ次第。だから俺を少しでも恨んだら、ブッ飛ばす」
遠い目をして永田はボソッと言った。
女の子に向かって、ブッ飛ばすだって。
どこまでも最低、最悪、非道な鬼畜野郎だ。
私はギュッと布団を握り締めて、永田の背中を見つめた。
私と一緒に住みたいのは、あんたなんでしょ?
そうじゃなきゃ、普通そんな言葉は言わないよ?
やっぱり変態だ。
「…話は終わりだ、部屋から出てけ。布団におまえの臭いがつくと、キモチ悪くてしょうがねぇ」
なんて人っ!!
でも、部屋を出る時、一先ずお礼を言った。
「永田、あのさ、昨夜はありがとう。永田のキスで私決めたわ。もう旦那には会わない。食繋ぎのためで、別れた旦那にキスを引き換えるだなんて、情けないもん。…っていうか、キスってそんなためのもんじゃないもんね。…永田のキスで、こっちのがホンモノだって思ったの…」
はっ…!
サラッとまた何言った私!
今、凄い恥ずかしい言葉を、うっかり言ってしまったよね。
「早く出てけ」
私は静かに部屋の扉を閉めて、またオンボロアパートへと戻って行った。
永田…、振り向かなかった。
冷たいはずなのに、気のせいか頬が赤く染まっていたような。
アイツ、本当に良く分かんないや。
私も失言した。
何か変な気分。
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