step5 勝手にしろ

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慌てたふりして、アパートの庭先で電話に出る。 「もしもし?」 「もしもし?体調はどうなの?」 疑われる事もなく、私の心配。 「うん、こないだはごめんね。胃の調子がおかしくて寝込んでた」 「おいおい、胃薬は飲んだのか?」 「ちょっと、昼ご飯のフライものが当たったかもねって感じ。今は平気だよ」 「うん、ならいいけど。今夜、会えない?」 きた。 やっぱり、お食事のお誘いだよ。 「トシコに話したい事があってさ」 「え?何なに~っ?」 どうしよう、話したい事だなんて。 私なんかに何の話があるのかな。 「結構、大切な話なんだよね。俺はそれをどうしてもトシコに一番に伝えたくて」 なんだろう。 ちょっとだけ気になるな。 ……ジャリ…ジャリ…ジャリ…… 足音がして、何気に振り返ると永田が仁王立ちしていた。 ウゲッ! とんだところを見られているような、気持ち。 「誰と電話してんだ?」 わざと聞こえるような大声で、イヤミったらしく言う。 「シッ、シッ!」 あっち行け! 「俺の敷地内で、携帯電話でくっちゃべったら近所迷惑で通報されるだろうが~」 なんだ、それ。 「ごめん、ちょっと後でかけ直す」 私は元旦那との着信を切って、永田を睨み付けてやった。 「うっとしいなぁ…」 「あぁ?なんだって?」 更に永田は、キツイ目をして睨み付ける。 「あんた、わざとやってるでしょ」 「わざとだけど、何か文句あるのか?」 ひ、開き直るか!? 「本気で嫌な性格!」 「おまえがな」 しかもすぐ言い返してくるから、私もすぐに言い返す。 「あんたがだっての!」 「おまえがだよ」 「あんたのが酷すぎるわ!」 「いやいや、おまえのがクレイジー?」 バカって普通に言えよ、バカ! もう、いいや。 面倒臭いから、部屋戻ろっと。 「元旦那だろ、今の」 「それが何か?」 私は無視して、アパートの中へと入ろうとした。
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