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慌てたふりして、アパートの庭先で電話に出る。
「もしもし?」
「もしもし?体調はどうなの?」
疑われる事もなく、私の心配。
「うん、こないだはごめんね。胃の調子がおかしくて寝込んでた」
「おいおい、胃薬は飲んだのか?」
「ちょっと、昼ご飯のフライものが当たったかもねって感じ。今は平気だよ」
「うん、ならいいけど。今夜、会えない?」
きた。
やっぱり、お食事のお誘いだよ。
「トシコに話したい事があってさ」
「え?何なに~っ?」
どうしよう、話したい事だなんて。
私なんかに何の話があるのかな。
「結構、大切な話なんだよね。俺はそれをどうしてもトシコに一番に伝えたくて」
なんだろう。
ちょっとだけ気になるな。
……ジャリ…ジャリ…ジャリ……
足音がして、何気に振り返ると永田が仁王立ちしていた。
ウゲッ!
とんだところを見られているような、気持ち。
「誰と電話してんだ?」
わざと聞こえるような大声で、イヤミったらしく言う。
「シッ、シッ!」
あっち行け!
「俺の敷地内で、携帯電話でくっちゃべったら近所迷惑で通報されるだろうが~」
なんだ、それ。
「ごめん、ちょっと後でかけ直す」
私は元旦那との着信を切って、永田を睨み付けてやった。
「うっとしいなぁ…」
「あぁ?なんだって?」
更に永田は、キツイ目をして睨み付ける。
「あんた、わざとやってるでしょ」
「わざとだけど、何か文句あるのか?」
ひ、開き直るか!?
「本気で嫌な性格!」
「おまえがな」
しかもすぐ言い返してくるから、私もすぐに言い返す。
「あんたがだっての!」
「おまえがだよ」
「あんたのが酷すぎるわ!」
「いやいや、おまえのがクレイジー?」
バカって普通に言えよ、バカ!
もう、いいや。
面倒臭いから、部屋戻ろっと。
「元旦那だろ、今の」
「それが何か?」
私は無視して、アパートの中へと入ろうとした。
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