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あの、永田という男は全く…。
私は布団に横たわり、一人ムカムカしていた。
アイツ、意味分かんない…。
…カッコいいけど…。
無理無理!無理!
トイレ借りに行くだけなのに…。
漏らすじゃん。
…勘弁してよ。
「…永田…か…」
私は布団の中にもぐった。
…アイツめ。
と、また奴の顔がふとよぎった。
30歳を過ぎてからの焦った結婚。
2年間の短い結婚生活に、悩み苦しむ事もなく離婚した。
友人にはまだまだ独身で、バリバリ仕事している人間がたくさんいるのに。
結婚して、知ったのは空しさだけだった。
幸せの自慢話なんて、誰だって聞きたくない。
仕事してる友人達からしてみたら、結婚というラクな選択をしたと思われていたに違いない。
私は正社員で働いてきた訳ではないが、パートととは言え、仕事士な方だから、専業主婦だなんて向いてない事くらい分かっていた。
ラクとは言え、自由もなく、いつも何をするにも旦那の許可を取らなくてはいけない。
正直、そういう面倒な事。
性格上、キツイ。
そんなやり取りを友人達は、きっと更に面倒臭そうに煙たがっていたのではないかと思う。
はっきり言って、誰かのためだとかって、自分を犠牲にする生活って、偽善的で私には無理。
それも分かり始めた頃には、何もしたくない病に侵されて、家事もせず、両親に甘えてばかりで、実家に居座ったりして逃げていた。
やっぱり私は、自分らしく生きて行きたい。
それを決め手に誰に相談する訳もなく、ワガママを一方的に突き通して、離婚したのだ。
両親は呆れて、怒鳴り付けてきた。
「もうこの家では、二度と生活させない」
そう言われて思う事。
永田の言う通り。
私は、ワガママで今まで旦那や親に甘やかされていた。
アイツに全否定されるのも、正直な所、間違ってはいないのだ。
頭のどっかで、こんな自分がダメなんだって分かっている。
だからアイツの言う言葉が、イチイチ私の的を得ているからこそ。
永田の言葉に支配されてしまう。
躾だなんて、この歳でどう躾るって言うのだろう。
今さら。
水曜日、土曜日が私の仕事休み。
それも、永田に決められた。
「俺の休みに合わせろ、そうしなければ自分の首を締める事になるぞ」
と、半ば脅し口調だった。
まぁ、確かに。
そのおかげで、トイレや洗濯機も貸して貰えるから、いいんだけどね。
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