冬桜

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手足のついたランドセルが歩いているとでも言いたくなるような小さな男の子。 ちらりと見えた校章の違う名札は「いちねんいちくみ」とだけ読めた。 窓側のベッドの女性のもとへ駆けよっていく。 が… 「だめよ。病院では静かにしなさいっていつも言ってるでしょ?」 たしなめられて、しゅんとする姿が可愛らしい。 身なりからして男の子と分かるが、眉の形や丸く大きな目、ふっくらした唇。何から何まで母親にそっくりな面立ちは幼いこともあってスカートをはかせたら女の子と言っても通じそうだ。 叔母とは顔を合わせているはずだが、こちらを向き、見慣れぬ顔がいることに緊張したような面持ちでぺこりと頭を下げるだけなのは、いささか人見知りなのだろうか。
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