58人が本棚に入れています
本棚に追加
男の子はベッド横のパイプ椅子に座るとランドセルから何やらノートらしきものを出して母親に見せている。
点数でもよかったのか、誉められてにっこりと笑った。
「ちいちゃん。あの子、いつも来てるの?」
親子の会話の邪魔にならぬように、小声で聞く。
「そうよ。毎日。」
続く言葉では、学校帰りに病院に寄り、姉が迎えに来るのを待ちながら、ああして病室で過ごしているらしい。
がさごそと音がするのに振り向けば、ノートをランドセルにしまいこみ、今度は色鉛筆を出し絵を描き始めた。
「あ…!」
カシャンと音をたててケースが落ち、ころころと病室中に色鉛筆が散らばった。
「はい。」
数本拾って渡すと
「ありがとう。おにいちゃん。」
一瞬驚いたような顔を見せたが、さっきとは違い、照れを覗かせた笑みでお礼を言う。
最初のコメントを投稿しよう!