冬桜

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小さな売り場にはところ狭しと病院内で使う日用品や雑誌が並んでいる。 「今ねえ、食べるものはそこにあるだけなのよ。」 その幸いに残っていたあんぱんを二つとコーラを手に取ると振り返って尋ねる。 「何がいい?」 「えっ?」 「ちいちゃ、うちのおばさんが、絵を描いてくれたお礼にって。好きなもの選んでいいよ。」 躊躇うのを、やや強引に飲み物の前へ連れていく。 「ほら。どれがいい?」 催促するように再び尋ねると、小さな手がようやく動き、おずおずとオレンジジュースを指差した。
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