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「まったく、母さんったら時間にルーズなんだから。さっさと手続き済ませてもらおっと。」
ぐぅぐぅ鳴る虫を手で擦りつつ、病室の番号を確かめて入れば、三人部屋の病室の真ん中のベッド。昨日までのそこの主は既に身支度を整え、食事を終えたらしい窓際の入院患者と談笑していた。
「あら。お迎えがいらしたみたいよ。もしかして、さっき話していたご自慢の甥っ子さん?」
「あ、こ、こんにちは。」
窓際の女性と目があった。叔母と同年輩だろうか。
顔黒目がちの大きな瞳にふっくらとした桃色の唇が収まった端正な顔だちは、小ぶりなことも相俟って少女らしい可愛らしさもまだ持ち合わせていた。
にっこりと微笑まれ、慌てて挨拶をする。
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