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「そうよ。いい子でしょ。お嬢さんと同い年。」
二つの笑顔が向けられる。
人前で自分のことを誉められただけでなく、話題になっていたのかと思うと気恥ずかしい。
そしてそれを悟られるのはもっと。
照れ隠しのために、体を動かすことにする。
「もう荷物運んじゃっていいの?これ?」
「いいのよ。慌てなくて。」
そう言われても…
やる方なしに病室をきょろきょろと見渡したが、片付いたベッド周りと、これまたお隣さんも極めて荷物が少ないと来れば、目のやり場などない。
「退院は喜ばしいけれど話し相手がいなくなっちゃうのは寂しいわね。」
「あら、それは私も。」
女性はおしゃべりの生き物。人の気も知らないで、と思ったが、自分そっちのけで再び始まった会話にほっとした。
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