冬桜

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それにしても母さん、何してるのかな。どこ行っちゃったんだろ? 手持ち無沙汰で待たされる間に思い出してしまった空腹が苛だちを募らせ始める。 と、廊下に響く足音の一つが病室の前で止まった。 「お待たせ。ナースステーションに寄ったら先生がいらしてて、ご挨拶のつもりが話し込んじゃったわ。」 「遅いよ。人のことは早くしなさいって言うくせに。」 悪びれもせずに入ってきた母に不満をぶつける。腹ぺこで待たされる身にもなってほしい。 「はいはい。悪かったわよ。」 「ちいちゃんを早く家に帰らせてあげたいって言ったの誰だよ?」 常日頃、姉のようになついていることもあって愛称で呼んでいる。 が、それを逆手に取られた。
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