冬桜

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やがて、事務員が会計の書類を持ってきた。 「姉さんにも面倒かけたけど、これ払ったらやっと終わりね。」 「貸して。代わりに行ってきてあげるわ。会計、すごく混んでて座るところもないのよ。疲れちゃうでしょ。」 気遣う母を大丈夫よ、と制して立ち上がるのを 「ちいちゃん、待たされてくたびれてるんだから母さんにやらせればいいよ。」 白い手から書類を引ったくるようにして奪い、母に押し付ける。 ささやかな意趣返し。 「ふふ。それじゃ、姉さんよろしくね。」 書類を受け取り、苦笑いしながら母が病室を出ていく。それと入れ違いのように… 「おかあさん、ただいまぁ!」 元気な声と共に黒いものが飛び込んできた。
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