奇人館

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「ずいぶん、お詳しいじゃないの。」 カチャリ、とスプーンを置き、髪を後ろで1つに束ねた少女…さっき、運転手に文句を言っていた子だ…が、冷ややかに言った。 「でも食事くらい、静かにとらせてくれない?」 何だか昔の私に似ている。刺々しい雰囲気。仕事でもあるまいし、彼女だけスーツを着用している。 「食堂は公的な場所よ。文句があるなら他所へ行くべきは貴女の方よ。」 私はつい、反抗的になる。 「そうね?では失礼するわ。」 彼女が立ち上がりかけた時、けたたましく電話がなる。 厨房から管理人の声が聞こえる。 「はあ…はい。いや、そうですか、はあ。」 そんなやり取りが始まると、彼女は食堂を出て行った。 私のせいか? この場に重い空気が流れている。 「三神は悪くないよ。あのスーツがツンケンしてるから。」 鳥澤がフォローしてくれた。 「私、あの人苦手です。」 芦原や、他の少女たちも頷く。 ああ、何と言おうか。 本当に彼女は昔の私に似て、やりきれない。 私も以前は周りから、こんな風に敬遠されてきたんだ…。
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