不吉な再会

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深緑の中を走るバスの振動が心地よく、私は読みかけの文庫本を開いたまま、微睡(まどろ)んでいた。 「雲行きが怪しくなってきた。天気予報なんて、実際あてにならないね!」 後ろの座席から、こんな声が聞こえてきて、眠りに堕ちそうになっていた私の意識が戻ってくる。 (ありえない…。) 駅から目的地まで、ノンストップで走るこのバスに、一番最初に乗車したのは、私のはずだった。 それから、他に6人の客が次々と乗ったはずだから、運転手をのぞけば全部で7人の乗客しか乗っていないはずなのだ。 後ろから二列目のこの席からは、頭が6つ見えている。 つまり、考えられる可能性は1つ。 声の主は、私より先に乗車していて、かつ、頭が見えないように最後尾席に身を隠していたのだ。 さらに、声の主はどうやら、独り言を言っているようである。 きっと、変わり者に違いない。ならば関わるのはよそう。 …と、結論づけたのだが…。
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