蝮と蝙蝠

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「生意気な!…貴女みたいな女っ…!」 彼女は、顔を真っ赤にして怒鳴るが、急に口をつぐんだ。 そして、気味の悪い笑顔で、ニタリと笑ったのだ。 「いいわ…どうせ、貴女は生きて帰れない。せいぜい、いきがっていなさい?」 管理人室のドアを思いきり蹴飛ばすと、彼女は階段をツカツカと上って行った。 足音が完全に消えると、私は息をハアッと吐き出した。 「脅しという感じではないわね。」 生きて帰れない、か。 彼女は、このゲームを既に認識しているのだろうか? 「すみませんでした。良かったら、中に入りませんか?」 管理人はドアの鍵を開けると、私達を中に入れてくれた。 …飾り気のない、殺風景な部屋。 鳥澤が気をきかせて、紅茶を入れてくれた。 私達は暖かい紅茶を飲みながら、管理人が口を開くのを待った。 50歳前後といったところか。鳥澤に父親がいるのかどうかは分からないが、私達の父親世代だ。 「風間様のこと、あまり悪く思わないで下さいね。」 第一声がそれだった。 「風間って、さっきの女性?別に気にしてないわ。」 私はあまりグチグチ悩む方じゃない。 「彼女は、画廊の人間です。なぜ、画廊の方がこんな何もない所にやってきたのか、私も疑問なのです。」 「それにしては穏やかじゃないね、彼女。画廊の人って、もっと落ち着いてないかな?」 鳥澤は肩をすくめた。 「先程も、芦原様という方に色々聞かれました。…確かに、ここは昔、売れない芸術家たちが身を寄せあって暮らしていた場所に違いありませんが、彼らの作品に芸術的価値があるとは思えません。」 管理人は困ったように笑う。 「ああいう、オカルト好きな方たちはよく訪れますけれどね。…私には理解いたしかねます。」 「…殺人事件があったのは本当なんですね?」 私が声をひそめると、管理人は頷く。
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