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駅前通りの賑やかな場所を抜けると、田園風景と果樹園、牧草地帯が広がる。
後は等高線ばかりの地図だ。
「さっき、小さな橋を渡ったよね。ここじゃない?」
鳥澤の金髪からふわりといい匂いがする。
以前、鳥頭と馬鹿にした事があるが、それも懐かしく思える。
(もう2度と会うことはないと思ってた。)
あれは血生臭い事件だったけれど、人生で初めて仲間が出来たように思えた時間だった…私の錯覚かもしれないが。
「あと少しの我慢ね。あら、雨だわ。」
鳥澤の予想通り、窓にポツポツと雨粒が吹き付けてきた。
雨は間もなくどしゃ降りに変わる。
「聞いてないよ!こんなの、サイアク。」
前の席から、落胆した少女の声。
「森の中を散歩したかったのに!」
まあ、気持ちは分かる。
私も久し振りに自然を満喫したかったから。
思いとは裏腹に、空に稲妻が走った。
「きゃあああっ!」
乗客の何人かが叫ぶ。
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