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「ううっ…こんな事ならおうちにいれば良かった…」
おやおや、泣き始めてしまった。
「やれやれ!」
鳥澤は立ち上がると、めそめそする少女の隣へ。
まったく、物好きだわ。
「大丈夫よ。車には雷は落ちないわ。…へぇ、あんたいいカメラ持っているじゃない!」
「エヘヘ…私、写真が趣味なの。良かったら、お姉さん後で撮らせてよ。」
すごい、もう友達を作ってる。
さっきまで泣きそうだった少女も落ち着いたようだ。
「うるさくて眠れないわ!」
突然、さらに前の方の席にいた少女が立ち上がる。
「ねぇ、運転手さん?まだ宿泊先に着かないの?」
少女はつかつかと通路を歩くと、運転手に食ってかかる。
「…お客さん、危ないから立たないでもらえませんか?」
慣れているのか、運転手は冷静に対処していた。
次の瞬間。
真後ろに凄まじい音が響き、白い光が走った。
私が耳をおさえ振り返ると、バスが通過したばかりの、大木が真っ二つに引き裂かれ、燃えているのだった…。
「ああッ!もう嫌ッ!」
通路には、先程運転手に文句を言っていた少女が身を低くして座り込んでいた。
「ほら、あそこですよ。お客さん。」
運転手だけはやけに冷静に喋っている。
見ると、嵐の中に古びた洋館が現れた。
私は何となく、不吉な予感がした。
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