奇人館

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「貴人じゃなく、奇人とはね。はは。」 誰も返事しないので、鳥澤が答える。 「元々の持ち主が、変わり者だったんだって。…ほら、この部屋にある彫刻なんか、変わっているでしょう?」 私も気がついていた。 可愛いアンティークや、パステルカラーを基調としたカーテン、テーブルクロスなどに紛れてはいるが、時々ぞっとするような彫刻を目にする。 「本当だ。あの柱の上にいるの、ガーゴイルかなあ?気持ち悪い!」 鳥澤が指差す先には、羽根の生えた悪魔のような生き物が、こちらを見下ろしていた。 「ランプの細工も、まるで人間の手みたいに見えるわ。」 それも、しわしわの老婆のような指なのだ。 「御名答よ。ここには売れない芸術家たちが住んでいたの。…それらは彼らの作品だと思うわ。」 芦原は満足そうに笑った。 「館のオーナーは貧しい彼らを擁護していた。しかし、芸術家には変わり者が多いわ。だから、いつしかここは奇人館と呼ばれるようになったの。」
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