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「朋美さん、そう言わないでさぁ、俺たちは同じクラスメートだろう。それに、文化祭では、一緒に萌えを研究したし、沖縄でも同じ班だった仲間じゃないかぁ。頼むよ」
良平が晶子と朋美の前で、両手を合わせて拝む格好をした。
「わたしは、良平さんを助けるよりも、イザベラを助けてあげたいから、協力するわ」
「ありがとう、晶子。あまり考えずに、野球部のマネージャーを引き受けたらドンドン泥沼にはまっていくようでほんとうのところ、ひとりで困っていましたの」
イザベラが晶子の手を取って、微笑んだ。
「イザベラさん、泥沼はないだろう。そりゃあ、アマガエルが柳の枝に飛びつくよりも、甲子園を目指すということは至難の業だけどね」
良平の自嘲的な言葉に、晶子が不安になった。
「その、とりあえず目指す三月の春季都大会の一次予選には何校が出場するの?」
「うん、晶子。二百校くらいかな。そのうち予選突破するのは四十校くらいだ」
「そうすると、本選に出るには二試合か三試合勝てばいいのね。それなら簡単じゃない」
「そうは言うけどね。うちは去年から一度も二試合を勝ち抜いたことがないんだ」
「それは、何が原因なの?」
「うん、それはこれからイザベラさんと一緒に過去十年間の戦績を調べて、その原因を突き止めるつもりなんだ」
何とも頼りない良平に朋美が呆れた。
「十年間の戦績を調べるって大変じゃない。二人でできるの?」
「だから、朋美さん。君たちにも手伝ってもらいたいと思ってるんだけど」
「わたしと晶子はダメよ。そんな余裕ないし、興味もないから」
「そうだ、秀太さんに頼んだら?彼は秀才だし、そんなのお手のモノよ」
「そうだな、晶子さん。グッドアイデアだ。それはそうする」
良平の含みのある物言いに、朋美が突っ込んだ。
「それはそうするって、ほかに何かあるの?」
「そうなんだ、朋美さん。これは君たちでないとできない相談なんだ」
「なんなの、その相談って?」
「それはイザベラさんのアイデアなんだ。だから、イザベラさんから説明してよ」
良平はそう言うと、イザベラの後ろに引き下がった。
「わかりましたわ。わたし考えたのですけど、野球部を応援するチアガールがいると思いますの」
イザベラの言葉に、晶子と朋美は顔を見合わせた。
「チアガール?」
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