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「私は仲間と一緒に努力できる場があればよかったの。でも中学のときのハイジャンのメンバーは最後まで理解してくれなかった。見舞いにも、私の両親か顧問の先生しか来てくれなかったしね。だから高校では一緒に笑い合える仲間を作ろうと思った。そんなときだよ。テレビで高校生クイズの番組を見たのは。私はたくさん出場しているチームの中でも、ある一つのチームに引き付けられた。公立校であまり偏差値が高くない高校だったけど名門校を次々と破って決勝にまで駒を進めた。その輝いている姿に私は感動させられたの。そして憧れて、思ったんだ。一人で頑張るんじゃなくて最高の三人で一緒に頑張りたいってね」    一人では立証できなかった努力を、今度は三人一緒で頑張っていきたいってことか。きれいごとかもしれないが、さっさとあきらめた俺には何も言えなかった。  少し俯(うつむ)くと、いきなりチャイムがなった。もう外は薄暗くなっていた。 「あれ、もうこんな時間なんだ。早く帰ろう。けどまずは荷物を持ってこないといけないね」  鬼龍院はぶつぶつと言いながら図書室の出口へと向かう。  俺は手に持っていた本を棚に返しながら考えてみた。ちなみにこの学園に卓球部はない。ならば考えることですらないだろう。 「もう一度……頑張ってみようかな」  多分また、どこかで躓(つまづ)くかもしれない。でも、あいつと一緒ならまた立ち上がれる気がする。 「どうしたの? 学校で一夜過ごすなら私は止めないけど」  出口を見ると鬼龍院は再び、薄笑いを浮かべていた。どうやら待っていてくれたようだ。 「今いくよ」 その言葉を最後に図書室に残して、俺は一歩を踏み出した。
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