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 いつも思うことなのだが、時が流れるのは早いもので、鬼龍院と出会ってからもう三ヶ月が過ぎようとしていた。  季節は夏で今は七月の下旬。すでに海鈴学園では夏休みに突入したのだが、俺は学校指定の夏服を着て、空き教室の前に立っていた。今ではクイズ研究部の部室として使用されている。  なんの因果か三ヶ月前に鬼龍院万里と出会った俺は、鬼龍院に諭された。結果、俺は頑張る対象を卓球からクイズへと変えたわけだが……もうかれこれ二十分くらい死ぬほど暑い廊下で汗をダラダラと流しながら立っていた。今日の朝、テレビでは天気予報のお姉さんが爽やかな顔で「今日は今年最高気温の猛暑日です?」って言ってたな。その爽やかで可愛らしい顔が汗まみれになるところを見てみたい。  俺は腕時計で現在の時間を確認した。十一時二十分ということは集合時間まであと十分(じっぷん)だ。  それにしても熱い。この学園は私立というだけあって各教室にはクーラーが完備されているのだが、今の俺にはこの部屋に入る勇気がなかった。くそ、少し早めに来たのに。三十分前集合が裏目に出るとは。 「ねぇ、なっくん。もう一回キスしてよ。今度はちょっと乱暴にお願い」 「ははっ。おまえにならいくらでもОK(オーケイ)さ」  また男女の声が聞こえてきた。二人とも若い声だ。最初に聞こえた声の方が女性で後の方は男性だった。ていうか男の方は聞き覚えがある。おそらく夏文先輩だ。 さっきから廊下にダダ漏れなんだよ! この教室を集合場所にされてるこっちの身にもなれや!   ……心の中でツッコミを入れるが余計虚しくなってくる。自分の年齢が彼女いない歴である俺にはつらい。
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