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  3  ちょっと気になることを思い出してみた。  よく学校のテストや試験のときに、始まる寸前まで参考書や教科書を開いて、最後の抵抗をする奴がいるが、鬼龍院の話だとあれは逆効果らしい。参考書などを読んでいるとき、人間の脳は覚える状態になっていて、いざテストを始めるときは思い出す状態に切り替わる。  しかしその切り替わりが問題のようだ。覚えることと思い出すことはすぐにはできない。そのためテスト本番になると頭の中が真っ白になることがあるらしい。  一時間の猶予(ゆうよ)をもらった俺は四十分ほど得意ジャンルの復習をし、残りの時間をリラックスにあてたのだが……。 「さっきは励ますつもりで言ったけど、やっぱりちょっと無謀だと思う。夏文先輩は三年生で経験豊富だし、早押しは得意だし、顔も君と先輩じゃ天と地の差があるし、それにやっぱり歴史が強いからね。よく問題を聞いとかないと1ポイントも取れないよ」 「今明らかに関係ないのが一つ混じっていたんだが」  鬼龍院は俺が少し前まで復習していた机に座りながらからかってくる。そして俺は鬼龍院に背を向けるようにして椅子に座り、いつかの図書室のように俺の両肩に、重さをあまり感じられない両足を左右一本ずつ乗せる。これが鬼龍院なりのスキンシップだ。  ていうかそんなに俺の顔はひどくねぇよ。  鬼龍院のくすくすと笑う声が後ろから聞こえてくる。俺は肩に乗ってる鬼龍院の足を落とさないように軽く振り向く。  部室の窓から降り注ぐ日光が鬼龍院を照らす。光の中で笑う鬼龍院はとても可愛く見えた。  ……なんだかんだでリラックスできたな。 「魚崎。そろそろ始めるぞ」  大人びた声のアルマ先輩が俺を振り向かせた。 「おい、万里。男子とそんなに密着するのははしたないぞ。離れなさい」   ……なんか父親みたいな言い方だな。アルマ先輩。  鬼龍院は言われるがままに俺から離れる。 「さて、これから始めるわけだが、早押しクイズのポイントはわかっているか?」  アルマ先輩は俺に問いかけてくるが腕組をしているせいか胸がより強調されている。
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