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 俺はゴクッと喉(のど)を鳴らしながら冷静になるように努めた。 「だ……大丈夫です。『ポイント押し』と『読ませ押し』ですよね」  早押しクイズには重要なポイントがいくつかある。出題される問題をしっかり聞くことがまず基本だが『ポイント押し』と『読ませ押し』は言わば応用技だ。  まずポイント押しは、正解につながる単語が出た瞬間に問題文を推理して、出題されている途中に答えを出すこと。たとえば、『京都の三大祭りとは、葵(あおい)祭(まつり)、時代(じだい)祭(まつり)と何?』という問題があったとする。ちなみに答えは祇園祭り。この問題は京都の三大祭りが何かを知っていれば、『京都の三大祭りとは、葵祭、じだ……』まで聞けば答えがわかる。ここでボタンを押すのがポイント押し。早押しクイズをやるなら覚えておきたい技だ。  たいして読ませ押しはポイント押しよりも有効的だがその分難しい。読ませ押しは正解につながる単語が出るよりもよりわずかに早くボタンを押し、出題者に少し先まで問題を読ませる技だ。 ちなみに俺の場合はポイント押しの方が得意だ。 「わかっているならいい。かぶってるジャンル中心でいくぞ」 「はい!」  俺は前に進んでボタンが置かれている机の前に立つ。すぐ右隣りには夏文先輩が俺と同じように立っている。しょっちゅう笑ってる人だが今は真面目な顔をしている。……一応対戦する前に挨拶しとくか。 「お手柔らかにお願いします」 「だが断る」  ……有名なマンガのセリフを使って断ってきた。 「それでは始めるぞ。準備はいいか?」 「はい!」  俺はわざとらしく大きな声で言った。少しでも相手がプレッシャーを感じてくれれば儲(もう)けもんだ。 「俺も大丈夫だ」
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