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あっけにとられてそいつの顔を見る。
真夜中の猫みたいにまん丸で鋭い目が俺を射抜いていた。前髪は眉の上までで、目がよく見える。顔だちは整っており、美人だった。肌はきめ細かく、まるで陶器のようになめらかで白かった。
「なんだ、わからないの?」
俺が反応に困っていると、ニーソ女が再び口を開いた。
「わ、悪い。なんて聞いたんだっけ?」
いきなりすぎてもう問題すら覚えていなかったので一応聞いてみた。
「……日本で一番高い山はなに?」
すると彼女はほぼ無表情のまま答えてきた。しかし、あれ? さっきと質問が少し変わってないか?
「富士山だろ?」
一応俺は素直に答える。
「正解だよ。日本人ならできて当然の問題だよね」
人をバカにしているようにも聞こえるセリフだが、俺もついさっきまで似たようなことを考えていたのだから文句は言えない。
「では次の問題に入ろう」
ニーソ女は自信満々の笑みを浮かべながら続けた。
「火星で一番高い山は何かな?」
「……」
ああ、なんだ火星ね。さっき聞いたのは俺の聞き間違いだったみたいだ。わざわざ二回も言わせて手間をかけさせてしまった。一回で聞けていればすぐに答えられたのに……。
俺は彼女に負けず劣らずの自信満々な笑みを返しながら自分の考えられる最高な『答え』を口から吐き出した。
「……わかりません」
だって俺もバカなのだから。
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