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 右隣(みぎどなり)にいた夏文先輩が声をかけてきた。 「現在のポイントは2対1でオレがリード。そしてこの早押し対決は3ポイント先取の特別ルールだからお前には後がない」  夏文先輩は先ほどの前半戦と違って積極的に俺にプレッシャーをかけてきた。けど今は奇妙なほど、気持ちが落ち着いてた。しかし先輩は構わず続けた。 「出題者が鬼龍院に変わったが、読むのは一回だけだろうな。おまえには悪いが、こっちも最後の大会がかかってるんだ。次の問題で決めさせてもらう」 「……いいえ。鬼龍院にはあと二回、問題を読んでもらいます」  夏文先輩の一問じゃなく俺の二問として。 「面白い。受けて立つぜ、後輩」 「胸を借りますよ、先輩」  挨拶もそこそこに俺と夏文先輩は前を向く。そこにはすでに鬼龍院がスタンバイしていた。 「では今から早押し対決の続きを始めます。お二人ともよろしいですね」  鬼龍院が確認をとってきたので俺は首を縦に振る。夏文先輩も似たような反応だった。 「それでは第四問。聖徳太子を皇太子にたてた、日本初の……」  ピンポン。俺と夏文先輩が同時に押したが、ボタンが鳴ったのは俺の方だった。 「推古天皇!」 「正解。続きを言うと……日本初の女性天皇は誰? 推古天皇で正解」  これで……これであと一つだ。今の問題は『聖徳太子』と『日本初の』という二つのキーワードでポイント押しができたが夏文先輩とギリギリだったな。  俺は二回深呼吸して再び集中する。泣いても笑っても次で最後だ。でも……次は何が出る? かぶってるジャンルが中心に出るが夏文先輩はそれを二年半やっているのに対し、俺はたったの二か月だ。ポイント押しの速さは圧倒的に夏文先輩の方が速い。今までポイントが取れたのはまぐれに近い。やばいぞ、また緊張して……。 「第五問!!」 「っ!?」  大きな声をめったに出さない鬼龍院が突然叫び、俺は意識を戻した。夏文先輩もアルマ先輩も驚いている。見ると鬼龍院の頬がわずかに赤かった。 「す……すみません。取り乱しました」  謝りながらちらりと俺の方を見る。なるほど、わざとか。  俺は人差し指で机をたたいてリズムをとる。  ありがとう鬼龍院、もう迷わない。おまえのおかげで吹っ切れた。ポイント押しがダメなら別の手がある。一か八かの諸刃の剣がな。 「だ……第五問。野球でスコアは得点のこと。では……」 ピンポン。
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