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 俺のボタンから安っぽい電子音が鳴り響く。これで回答権は俺だ。そして鬼龍院の出題で『では』のあとに『お』と言ったのも俺は聞き逃さなかった。 考えろ、『お』から始まるものでスコアと呼ぶものを……。 「魚崎、どうした?」 「楽譜!!」  アルマ先輩の心配をよそに俺は弾き出した答えを叫ぶ。頭が茹で上がりそうだ。バカにはキツイ。 「ど……どうだ鬼龍院!?」  俺は何とかそれだけ言うと鬼龍院が口を開いた。 「野球でスコアは得点のこと。では、音楽でスコアと言ったら何? 楽譜で正解!」 「よっしゃぁぁ!」  ガッツポーズを決めて俺は叫んだ。勝ったんだ、夏文先輩に。 「おめでとう。これで高校生クイズ大会のメンバーが決まったな。よろしく」  勝利の余韻に浸っていた俺に、アルマ先輩が歩み寄ってきては、右手を差し出して握手を求めてきた。俺はその手を握る。 「はい! よろしくお願いします」 その手を放すと今度は鬼龍院が近づいてきた。 「ありがとうな。おまえのおかげだ」  俺は素直にお礼を言う。普段辛辣な言葉を浴びせてくる鬼龍院だが、今回の早押しクイズはこいつがいなかったら絶対に勝てなかった。 「あとでアイスでもおごってもらうよ」 「了解」  俺は笑って返した。すると、アルマ先輩が俺の後ろへと視線を向ける。 そこには顔面蒼白の夏文先輩がいた。わずかに震えていて、さっきまでの強気の姿勢は微塵も残っていなかった。耳を澄ますとぶつぶつと何かを言っているのが聴こえる。 そこへアルマ先輩が歩み寄って……。  バチン! 「っ!?」  驚いた。いきなりアルマ先輩が夏文先輩にビンタをお見舞いした。頬を叩かれた夏文先輩はアルマ先輩に視線を向ける。 「敗北と向き合え。おまえはよくやった」 アルマ先輩が言い終わると、憑き物が落ちたように夏文先輩はその場で崩れ落ちて涙を流した。
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