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図書室を見渡しながら感傷に浸っていると、入り口のドアが少しだけ開いているのが目に入った。誰かの閉め忘れだろうか?
そんなに距離もないので閉めようと立ち上がったとき……。
しゅるんっ。
「ッ!?」
いきなり隙間から何かが入ってきた!?
「やあやあ、これはこれは。さっきの男子くんじゃない。まさかとは思ったが律儀に調べに来たの? ん、どうしたのかな? そんな猫に睨まれたような顔をして」
「きっ……鬼龍院!?」
先ほどのニーソ女の姿がそこにはあった。ていうか隙間から入ってくるな! ちゃんと開けろ! ほんとに猫かおまえは!
「おや、私の名前を知っているの? なら君の名前も教えてよ。そうじゃないとフェアじゃないからね。なるほど、『魚崎秋彦』……か。そうだ。律儀に図書室へと足を運んだことに敬意を表して私があだ名をつけてあげよう。ドジョウ君なんてどうだい?」
机の上に置かれた名前入りの図書カードを見ては鬼龍院は淡々と話を進める。
「……却下。そもそもあだ名は敬意を表してつけるようなものじゃないだろ。ていうかなぜドジョウ?」
「そのぐらい自分で考えてみなよ。しかしそうだね。君の言うことも一理あるかな。あだ名のほうはやめておこう」
鬼龍院はたいして悪びれもせずにそう言うと、薄笑いを浮かべながら俺が座ってた席の前の席に座る。
「どうしたのかな? 座りなよ。折角だから話をしようよ」
ついさっき一度会っただけなのに、こいつからは親近感のある趣を感じる。口調のせいか?
「別にかまわないけどおまえは何しに来たんだ?」
俺は言いながら席について先ほど机に置いた本を開く。別に読みながらでも会話ぐらい余裕でできるだろう。
「今後三年間お世話になる海鈴学園の図書室を見に来たの。今日は部活がないからね。他にも色々と見て回ってきたよ。入学後の校舎案内だけではわからなかったところも多かったからね」
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