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ポツリと言葉が漏れる
「また失敗のようだ……」
男は残念そうにはつぶやいたが、表情は活き活きとしている。
とある研究機関の責任者シルバは失敗作の入った、通称"フラスコ"から目を離すと次のフラスコを一瞥する。
子供のように目をキラキラと輝かせてそれを見つめる。
怪しくピンク色に染まった液体の中に静かに揺蕩う……人形。
それを愛おしそうに眺め一言つぶやく、語りかけるように訴えるように。
「340の過ちを犯した、まぁ別段気にもしていない……どうやらこの数年で感情が欠落しているようだ」
先ほどの表情とは一変、瞳に暗い光を落としさらに語りかける。
「それでもいい、たった一つ……この願いを実現させるために!壊れないでくれよ……我らが救世主よ」
フラスコの中で彼は何も理解できないはずなのにシルバの言葉は聞こえていた、ふと思う望まれている存在ならば、なぜにもこうして無力に浮かぶだけなのだろう、なぜにもこんなに悲しげな瞳を向けられるのだろうと……。
暗い室内で一つ意志を持ったフラスコの中の人形は、あたり一面に飾られた別のフラスコの存在など知る由もなく未だ目覚めることなく揺蕩う、生まれたての思考を加速させながら。
そして世界を壊すために、守るために生み出された人形にシルバは言葉を投げかける。
「メシア……もしも其処から出られたのならばその名を与えよう」
救世の英雄となるか、絶望の魔物となるか、そんなことなどシルバはどうでもよかった。
たった一つだけ成し遂げたい大志、そのために振りかざした大義。
もう後に引けないのならばせめて祈るのだ。
たった一つの願いをどうか邪魔しないでくれと。
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