プロローグ

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「随分滑稽なものだな。」 彼は背に生える巨大な純白を広げ面倒くさそうに立ち上がる、正面に跪くもうひとりは顔を上げてしっかりと彼を見据える。 「自ら降りられるのですか?エンジェル=ソルよ」 その問に答えることなくエンジェル=ソルは最大限に翼を広げ飛び立つ、純白の空間に取り残されたもうひとりの天使ノトス=ライアは困ったような顔で立ち上がる。 そうしてエンジェルが飛び立った方角を確認すると、その背に生えた翼を広げて飛び立つ、しかしエンジェルの後を追うのではない、王に報告に向かうのだ。 天使の国を治める至高の存在、王と崇められる最高位天使クレイン=クイン、世界を統べる絶対者。 故にノトスは気が重い、毎回のごとくエンジェルの勝手な行動を報告している彼は、エンジェルに呆れていると同時にクレインには申し訳ない気持ちでいっぱいだ。 そんな思考を巡らせているとびっくりするほど早く目的地に到着する、重い翼を羽ばたかせ、嫌々ながら謁見する。 純白の空間にポツリと存在する王座、それに君臨するクレイン、飾り映えのない空間で異様な存在感を放つ彼の目の前でノトスは跪く。 「クレイン=クインよ報告します。第4位天使エンジェル=ソルは命令を受けることなく飛び立ちました、えーっとこれで7度目になりますが……どう致しましょう?」 「え?もう面倒くさいからいいよほっとけよ、どうせすぐ帰ってくるし人間ごときが敵うわけないしね」 さも面倒くさそうにそう告げるとノトスを見下ろす。 「まぁルール?だけど面倒だから次からはいいやこなくて、真面目なのはいい事だけどこれからも多そうだからね」 そう告げるとクレインは手をかざしてモニターを出現させる、そこには真っ赤に染まる町と楽しげに殺戮を行う返り血にまみれた天使エンジェル。 浮かべる笑みはおよそ聖なる存在を想像させない薄気味悪いもの、不気味な笑い声とともに紅に染まる街を駆けるそれは悪魔のように残忍であった。 「ね?言ったでしょ」
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