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まなの手を引き、川土手を歩く。
彼女の涙は枯れることを知らない。
ぽたぽたと落ちる涙は、ヘンゼルとグレーテルが落としたパンくずのように帰り道を示すが、太陽に照らされすぐに消えるだろう。
「また来るから」
まなはこくんと頷く。
「絶対来るから」
彼女は大輝の声に何度も頷いた。
遠く、バスのエンジン音が聞こえた。
まなは握った手に力を入れる。
大輝はその手をそっと離した。
「またおいで」
曾祖母の声に大輝は「うん」と答える。
まなは泣きじゃくった顔を上げ、何かを言おうとするが嗚咽が邪魔してうまくしゃべれない。
「……ヒック、て、ね? うっ、ね? また、ヒック、きて、ふぇ……」
それでも一生懸命喋ろうとする彼女を見つめる。
「また来るよ」
大輝は喉までこみ上げた涙を飲み込んでそう告げた。
バスが止まり、ドアが開く。
もう、大輝は振り返らなかった。
聞こえるのは彼女の泣き声。
それだけが胸に刺さる。
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