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急に聞こえてきた声に、ふと視線を向けると。
教室の隅、普段は壁に立てかけてあるパイプ椅子に、なんとも怪しげな黒ずくめの男が腰掛けていた。
いつからいたのか。
声は確かに聞こえるし、姿も確かに見え、男だということもわかる。
それなのに、次元が違っているような、背景と同化しているような、不思議な印象を受ける。
『いいね。いいよ。
いい慌てぶりだよ。タカシ君。』
黒スーツ、黒ハット、黒い手袋、黒い革靴。
見るからに怪しすぎる黒づくめの男。
その気配の薄さのせいか、教卓の横にあるパイプ椅子に、さも最初から腰掛けていたかのように感じてしまう。
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