二章 ペン型時航機

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急に聞こえてきた声に、ふと視線を向けると。 教室の隅、普段は壁に立てかけてあるパイプ椅子に、なんとも怪しげな黒ずくめの男が腰掛けていた。 いつからいたのか。 声は確かに聞こえるし、姿も確かに見え、男だということもわかる。 それなのに、次元が違っているような、背景と同化しているような、不思議な印象を受ける。 『いいね。いいよ。 いい慌てぶりだよ。タカシ君。』 黒スーツ、黒ハット、黒い手袋、黒い革靴。 見るからに怪しすぎる黒づくめの男。 その気配の薄さのせいか、教卓の横にあるパイプ椅子に、さも最初から腰掛けていたかのように感じてしまう。
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